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冨樫作品の長文は何故読み易いのか 

もう軽く1年以上前にアップした記事になりますが、ジャンプの「HUNTER×HUNTER」感想の記事に画像を付け、文章を付け加えた上で別口にうpします。過去の記事を何となく読み返していたら、これは絶対に画像があった方がわかり易いなと思いまして。内容的にも別にタイムリーである必要はない記事ですし。そんなわけで今更ながらアップします。

ちなみに、当時は「HUNTER×HUNTER」が2年近い休載から復活したばかりの頃なので文章もそれらしいものになっています。
週刊少年ジャンプ ?46
「HUNTER×HUNTER」 冨樫義博
相変わらず上手い。これだけの文章量を「読まされてしまう」。この感覚も20ヶ月ぶりか…。以前から冨樫作品はどんなに文章量が多くてもそれを「長い」とか「読みにくい」と感じたことは無くて、むしろスラスラと読まされてしまうですよね。それは何故か、ってのを自分なりにちょっと考えてみた。

要因は主に3つ。

要因①:セリフの二分割
一つ目の要因はセリフを一つのコマに二分割しているから。今週のだけ見てみても、かなりの割合でセリフが二分割されていている。今週のジャンプの P267なんかはその最たるもので、わざわざウェルフィンの顔を右目と左目、口の三つのカットに分けた上でそれぞれセリフを二分割している。まあ『二分割』という表現が正しいかどうか正直自分でも微妙なところなんですが、でも他にいい言葉が見つからなかったので…。要するに左右にセリフを展開しているってことです。
ハンターハンター
「HUNTER×HUNTER」25巻P37

二分割と言っても上と下ではなく、必ず右と左に二分割。これらから推察できるのは、右と左に二分割するのが漫画にとって一番読みやすい形式だってこと。なんでそれが一番読みやすいのかと言うと、漫画とはページの右上から左下へ読むようになっているからではないでしょうか。そういった漫画独特の特性を利用してるわけです。

で、読者は基本的に活字を追いながら読む。右と左にセリフを分けるということは、そのコマ全体に目を走らせるということでもあります。では何故そうするのかというと、そのコマに含まれている絵的な情報を読み取り易くするためです。例えばP264でウェルフィンが「賊のルートは」(右)「こうだ…!」(左)と、これまたセリフを二分割しているんですが、右と左のセリフの間に「賊のルート」が描かれています。
ハンターハンター1
「HUNTER×HUNTER」25巻P34

こうすると右のセリフから左のセリフと読むとき(目を走らせるとき)に、その中間にある「賊のルート」がどうしても読者の目に入るかたちになり、結果的にセリフを読んだだけで賊のルートが読者に伝わるんですね。少なくとも右側にセリフをまとめるよりは効果があるでしょう。

とまあ、ここまで語っておいてなんだけど他の漫画も基本的には右と左に二分割している。漫画制作の上で基本的なことだとは思うけど、でもここまで徹底している漫画は少なくともジャンプでは「HUNTER×HUNTER」だけ。

要因②:短文の連続
二つ目の要因は、右と左のセリフでそれぞれ文章が一度完結しているという点。冨樫作品では全体的にどんなに文章量が多くても一つ一つの文章量は至って普通。むしろ少ないくらいかもしれない。つまり、短い文章を連続して読んでるってことです。これによっていい具合にテンポが生まれて抜群に読みやすくなる。他の漫画は二分割こそしていても一つの文章を無理に右と左に分けられていたり、左右どちらかに二つも三つも文章が重なっていたりと、読むリズムが強制的に崩されてしまってることがかなり多い。それに対し「HUNTER×HUNTER」は左右どちらかに短文が一つずつ(中央にもう一つあるときもある)というある種、制約のようなものが出来ていて、「このくらい読んだら次のコマへ」というようなリズムが形成されているように感じる。しかもその制約が崩れることは殆ど無い。

要因③:俳句のリズム
そして三つ目の要因。これが他のジャンプ漫画と決定的に違うところでしょうか。
読むリズムに関して冨樫作品が他のジャンプ作品と一線を画しているのは、一つ一つの文章(セリフ)がテンポの良い字数で形成されているという点。「テンポの良い字数っていくつだよ」と思う人もいるかもしれませんがそれはズバリ『五』と『七』です。そう、つまり俳句です(もちろん短歌や川柳も)。

日本語でこれほど美しいリズムは存在しません。だから俳句は美しいのです。とは言え、俳句には字足らずや字余りもあるので厳密に五文字・七文字でないと良いリズムが生まれないという訳ではなく、大体4~8文字くらいで構成された文章だと「良いリズム」というモノは形成されるようです。

余談になりますが、『五』と『七』のリズムで形成された言葉はリズムが良いというだけでなく、非常に覚え易いという特徴があります。そして現実社会でもその特徴を利用して色々なキャッチフレーズ等に応用されています。例えば「ご利用は・計画的に」とか「(○番線に電車がまいります)危険ですから・白線の・内側に下がり・お待ちください」とか。新聞の見出しとかも多いですね。あと関係ないかもしれませんが「かめはめ波」とか「アバンストラッシュ」とか(笑)。いつまでも覚えている言葉というのは、何度も読んだり聞いたりしているから覚えているのだけではなく、こうして良いリズムが形成されてたりしていることが非常に多いです。他にもたくさんあるので探してみると結構面白いですよ。

で、冨樫作品ではどうなのかというと、流石に全てのセリフの字数まで計算しているとは思えませんが、でも一つ一つの文章はすごく読み易いです。リズムがいいです。で、そういったセリフの字数を調べてみると、やはり五や七に近い字数で形成されていることが結構あるわけです。そしてこういったところに注意して読み返してみると、冨樫がセリフである程度リズムをコントロールしていることに気がつくはずです。冨樫さん、セリフには相当こだわっていると思います。

こうしてセリフを右と左に二分割し、その一つ一つの文章が短く、更にその字数がリズムの良い字数で形成されている。だから読みやすい。読みやすいと言うよりも、気付いたら全部読んでいたと言った方が表現としては近い気がする。

以上が冨樫作品が読み易い理由です(読み易い理由は他にもたくさんあります。コマ割りとか構図とか。でも今回はセリフや文章に焦点をあててみました)。

私もブログをやってて強く思いますが、普通に文章を短くまとめるだけでも相当難しいです(実際この記事も綺麗にまとまってる訳じゃないし…)。でも冨樫はこれら3点を徹底してやった上で、どのセリフも内容的に全く無駄が無く同時にキャラを立てながらその時の感情なんかを付属させてやっているんですよね。こういうことをサラッと当然とやりのけてしまうのを見ると、先週復活したばかりの「HUNTER×HUNTER」ですがやはり思わざるを得ないわけです。上手い、と。
[ 2009/05/11 00:00 ] 未分類(雑記) | TB(0) | CM(0) このエントリーをはてなブックマークに追加
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